技術選最終日となる11日(日曜日)の白馬・八方尾根スキー場は、曇りがちではあるが青空が垣間見え、時折太陽が照りつけるなど、昨日までの天候とは一変して、まるで決勝の舞台を祝うかのような陽気でスタートした。
競技開始前には、ちょうど1年前の技術選開催中に起こった東日本大震災で犠牲になられた方への哀悼の意を込め、また、今なお不便な状況下におかれながらも、復興に全力を尽くしている方々へ向けた黙とうと祈念が行われた。スキーとは縁の深い東北復興へのエールを込めた、選手たちの最後の戦いが遂に始まる。
決勝戦は2種目で争われる。まずはウスバゲレンデでフリー滑走(総合斜面)を行い、続けて八方技術選の名物コース・白馬ジャンプ競技場のラージヒル着地斜面での小回り(総合斜面)で最終種目となる。昨日までは男女ともに班を分け、ローテーションをして2つの種目を同時並行で行っていたが、今日の決勝は男子64名、女子20名全員が同じ会場で1つの種目を行う。
コース取りやライバルとの心理的な駆け引きなど、今までよりもシビアな戦いが予想される中、女子フリーではディフェンディングチャンピオンの金子あゆみ選手(新潟県)が攻めの滑りを見せて最高得点の277PTを獲得、逆転優勝に望みをつないだ。
男子では準決勝1位の吉岡大輔選手(新潟県)が好調を維持。ハイスピードながら体の上下動の少ない静加重のお手本のような技術を披露して、覇者・丸山貴雄選手(長野県)の得点を1ポイント上回る286PTで初優勝を自身の滑りで引き寄せた。
1種目を終えた時点で男子は吉岡選手、女子はフリーで2位となるポイントを獲得した佐藤麻子選手(青森県)が暫定1位となり、選手たちは2種目の会場となるジャンプ台へと移動。最大斜度37.5°というギャラリー席から見上げると、まるでそそり立つ白い壁のようなコースで最終種目の小回りがスタートした。
女子は上位の各選手が270PT台をマークする中で、兼子佳代選手(福島県※上から1枚目写真)がスピードとリズム感のある安定した滑りで他の選手を圧倒する280PTを叩きだし、最終滑走者である佐藤選手の結果を待った。佐藤選手も兼子選手に肉薄する滑りを見せ、優勝者の決定はジャッジにゆだねられたが佐藤選手のポイントは277PT。総合得点で惜しくも1ポイント及ばず、兼子選手の初優勝が決まった。
男子の優勝の行方は、ここまでしのぎを削ってきた吉岡選手と丸山選手の一騎打ちの様相を呈していたが、まず先にコースを滑り終えたのは、荒れた斜面を物ともしないアグレッシブな滑りをみせた丸山選手(※上から2枚目写真)。貫録の滑りでこの時点でのトップスコアとなる288PTを獲得、吉岡選手にプレッシャーを掛けゴールエリアで運命を待った。
288PT以上を奪えば、念願の初優勝となる吉岡選手は、丸山選手の逆となるギャラリーから見て右のコースを選択。急斜面でもしっかりと確実に弧を描き、初優勝へ向けたターンを刻んでいった。ゴールラインを抜け一瞬の静寂の後、読み上げられた吉岡選手のポイントは283PT。その瞬間、崩れ落ちるように膝をつき、喜びを噛みしめた丸山選手の技術選史上初となる3連覇が決定した。
2012年の戦いは今日で幕を閉じた。しかし、来年の技術選に向けた戦いはすでに始まっている。今年上位に入った選手も、惜しくも決勝に駒を進めることができなかった参加者も、さらには、県予選で敗退してしまった人も、すべてのスキーヤーが次の技術選に向けて同時にスタートを切る日でもある。
すべての戦いが終わり、男女優勝者のウイニングランが行われた後、今年を最後に技術選の舞台を引退する渡辺一樹選手(長野県※上から4枚目写真)、伊東秀朗選手(山形県)、太田真由美選手(長野県)のセレモニー滑走が行われた。
その中でも大会2連覇を2回達成し、四半世紀以上この技術選を戦ってきたミスターデモンストレーター“渡辺一樹”選手は、往年のウェアやゴーグルを身にまとって登場。この姿に憧れて技術選を目指したファンを最後の最後まで魅了し、多くの人に惜しまれながら引退の花道を自らの滑りで飾った。
種目:フリー滑走/ウスバゲレンデ、小回り/白馬ジャンプ競技場 ラージヒル
【リザルト】
<男子>
1位 丸山 貴雄(長野県) 1,412PT
2位 吉岡 大輔(新潟県) 1,408PT
3位 柏木 義之(新潟県) 1,406PT
4位 山田 卓也(北海道) 1,400PT
5位 井山 敬介(北海道) 1,400PT
6位 松沢 寿(長野県) 1,388PT
7位 片山 秀斗(新潟県) 1,383PT
8位 藤井 守之(新潟県) 1,382PT
9位 岡田 利修(東京都) 1,380PT
10位 青木 哲也(新潟県) 1,376PT
11位 岡田 慎(新潟県) 1,374PT
12位 水落 亮太(新潟県) 1,373PT
13位 片桐 貴司(長野県) 1,371PT
14位 石水 克友(岐阜県) 1,367PT
15位 太谷 敏也(長野県) 1,367PT
16位 栗山 太樹(新潟県) 1,363PT
17位 高瀬 慎一(富山県) 1,362PT
18位 渡部 浩司(山形県) 1,360PT
19位 徳竹 剛(長野県) 1,359PT
20位 竹田 征吾(長野県) 1,352PT
<女子>
1位 兼子 佳代(福島県) 1,360PT
2位 佐藤 麻子(青森県) 1,359PT
3位 金子 あゆみ(新潟県) 1,351PT
4位 沖 聖子(福岡県) 1,350PT
5位 水落 育美(秋田県) 1,349PT
6位 岡村 聡子(富山県) 1,344PT
7位 中田 良子(青森県) 1,339PT
8位 関塚 真美(新潟県) 1,337PT
9位 藤田 潤子(秋田県) 1,330PT
10位 栗山 未来(新潟県) 1,326PT
オフィシャルサイトはこちら
http://www.hakuba-happo.or.jp/49gisen/