王者と女王が決まる最終日。しかし、今回はデモンストレーター選考会を兼ねていることもあり、トップ争いだけでなく、デモを目指す選手たちの闘いもあって、最後の2種目が終わるまで緊張感のある雰囲気で行なわれた。
最終部は2種目ともうさぎ平ゲレンデを使用。最初にコース向かって左側で「フリー/急斜面整地」を、そして最後はコース向かって右側で「小回り/急斜面不整地」が行なわれた。
一種目目の「フリー/急斜面整地」で、まず女子は兼子佳代選手が278点の高得点を挙げるも、佐藤麻子選手が277点と差を縮められず、前日3位で、この種目で少しでも追い上げたかった金子あゆみ選手は274点と逆に差を広げられてしまい、残り1種目で女子の優勝争いは佐藤選手と兼子選手の2人に絞られた。
男子は前日トップの柏木義之選手が同じく前日トップの井山敬介選手より先に滑り、284点というスコアでプレッシャーを掛けたかに見えたが、井山選手は286点のハイスコア。そして前日3位の丸山貴雄選手も285点を挙げ、この結果1位と2位、2位と3位の差が2点差ずつと僅差で、少しのミスも許されない状況で最終種目が行なわれることになった。
最終種目は天候の悪化が予想されていたため、急遽、開始時間を早める措置(11時15分スタート)が取られた。しかし午後から悪化するとも言われていたが雪の降り始めが早く、最終種目の女子選手スタート後、しばらくは競技が続けられたが、次第に霧が濃くなっていき、トップを争う残り3人という時点で、ジャッジ席から完全にスタートラインはおろかコースのほとんどが見えなくなってしまった。
長い長い待機時間の後、ガスが途切れる間隙を縫って競技を再開。しかし金子選手はスタートしたものの、コース途中でガスが濃くなったことで再スタート。それでも驚異の集中力で281点を叩き出す。ところが続く兼子選手と佐藤選手は、さらに条件が厳しい状況になっていたにも関わらず、どちらも282点という高得点で勝負は決着。佐藤選手は2連覇を達成した。
女子の競技が終わると、またガスが濃くなってしまい。男子の開始時間は大幅に遅れた。結局午後2時にようやく競技をスタートすることができた。しかし時間が経つにつれ視界だけでなく、降雪で雪面(コブ)の状況も悪くなる中で、バランスを崩したり転倒する選手も多かった。
前日の順位によるリバーススタートで、コブを得意とする丸山選手が先に滑り287点の高得点を挙げ、自信と不安の入り交じったような顔でコースを見上げて、井山選手と柏木選手の滑りを待った。
続いて滑ったのは井山敬介選手。昨年はトップ争いに加わることができなかったが、昨年のこの最終種目でトップとなる285点を叩き出している。それも自信になっているのだろうか、完璧な滑りで丸山選手と同じ287点を挙げる。
スタートに残っているのは柏木選手、ただひとり。289点で井山選手と総合得点が同点、逆転には290点が必要というプレッシャーがあったかもしれないが、しっかり身体が動いて滑らかなスキーコントロールでゴール。得点表示は287点。その瞬間、井山選手の6年ぶりの優勝が決まった。
女子は昨年優勝を経験した佐藤選手が、優勝するための戦い方を覚えたようにも思える安定感を感じられた。そして見事に復活した兼子選手や金子選手らライバルとの闘いはもちろん、成長し続けている大場朱莉選手や関塚真美選手、栗山未来選手など、期待できる若手の存在がいることも楽しみだ。
一方で今季も男子の優勝争いは優勝経験のあるベテラン勢。そのポテンシャルはかなりのものであることは間違いないのだが、その実力者たちの間を割って、思わず肝を冷やすような活躍を見せる選手が、次大会で現われることを期待したい。
Photo&Text Tomohiro Watanabe
【男子総合リザルト】
1位 井山敬介(北海道)1,983pt
2位 柏木義之(新潟県)1,981pt
3位 丸山貴雄(長野県)1,979pt
4位 吉岡大輔(新潟県)1,971pt
5位 水落亮太(新潟県)1,967pt
男子総合リザルト詳細はこちら
http://hakubamura.net/gisen/result/final-male.pdf
【女子総合リザルト】
1位 佐藤麻子(青森県)1,934pt
2位 兼子佳代(福島県)1,932pt
3位 金子あゆみ(新潟県)1,923pt
4位 大場朱莉(宮城県)1,911pt
5位 関塚真美(新潟県)1,910pt
女子総合リザルト詳細はこちら
http://hakubamura.net/gisen/result/final-female.pdf
技術選オフィシャルサイトはこちら
http://www.hakuba-happo.or.jp/51gisen/