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山とスキーをこよなく愛したことで知られる画文家辻まこと(1913-1975)のエッセイに「蔵王スキーバスの旅」(初出1970年,『辻まことセレクションⅠ』(平凡社)に収録)という一篇があります。
3時間待ちの横倉のゴンドラ,風と雪,人混み,○急ツアーの添乗員のアンチャンのいいかげんさやZホテルの投げやりな調理,そしてひもじがる同宿の中学生たちの様子のあとに,
「四日目に待ちに待った晴天が来た。いち早く暗いうちにゴンドラに乗り頂上に登った。今日一日は山をおりるこっちゃないと覚悟を決める。連日の雪で三月の蔵王連峰は見事な冬景色だ。昼食にトドマツヒュッテで一時間,三時頃パラダイス(何というイナカくさい名称だろう)付近で三十分ほど休んだほかはかせぎまくった。 (中略) 長々とつづく樹氷コースの美しさ。頂上からザンゲ坂までの緊張など,その眺望とともに楽しい一日だった。」
と,蔵王の魅力を描いています。
辻まことにはおよぶべくもありませんが,「百万人ゲレンデをのびのびと滑る楽しさ。パラダイスから見上げた地蔵岳。ユーモラスに見えてくるモンスターの数々。どのシーンもどの景色も忘れられない。帰りの列車の中で何度となく反芻するのであった。」