スキー場の営業期間が終了し、ゲレンデが白銀から新緑がまばゆい景色に様変わりした2024年5月15日、東急スノリーゾートの5スキー場と全国のBURTON直営店5店舗のスタッフによる、スキー場のサステナビリティな取組「マウンテンクリーン」が同時開催された。
今回は、そのなかの1箇所でありPOW JAPANも参加した、長野県のタングラムスキーサーカスに足を運んだので、その様子をレポートしよう。
スキー場関係者やスノーボードメーカーが、どのような思いで今回のマウンテンクリーンに取り組んだのか、その思いも聞いてみた。
今回の企画は、東急スノーリゾートが掲げる「サステナビリティ for Snow」の一環として、BURTONと合同で全国5カ所の施設にて、マウンテンクリーンを行うというもの。
自分たちのフィールドを自分たちの手でキレイにし、スキー場の山や自然を守る事でスキー場の未来を守っていこうという、両者に共通するアツい思いから実現した。
北海道、栃木県、群馬県、長野県、福井県で運営する東急スノーリゾートの5施設で一斉にマウンテンクリーンは行われたのだが、われわれが参加したのはタングラム斑尾。
スキー場スタッフとBURTON FLAGSHIP NAGANOのスタッフ、そこにスノーコミュニティ発の脱炭素社会の実現をビジョンに挙げるPOW JAPANスタッフ&アンバサダーも加わり、当日は総勢25名の雪山好きが集まった。
これまでも、スキー場、BURTON、POW JAPAN、それぞれが、サステナビリティな取組やマウンテンクリーンの活動を行ってきているのだが、合同での開催は今回が初。
朝の集合では各代表が挨拶をし、各自バケツとトングを持って、さっそくリフトに乗り込みスキー場上部へと向かった。
この日は絶好のマウンテンクリーン日和!
山頂に着くと「野尻湖テラス」から北信五岳やその奥にまだ雪が残る北アルプスの絶景が広がり、参加者全員が大自然のパワーを全身に感じて、一気にクリーン活動のやる気スイッチがONに!!
ちなみに、東急スノーリゾートのリフトや施設はすべて100%再生エネルギーで運営されていて、今回利用したリフトも環境負荷が少ないというのもポイント。
人間が生きていくうえで、環境負荷をまったくかけないということは不可能な話ではあるが、できる限り環境にやさしく、サステナブルを考慮した施設を利用するということは、誰にでも簡単にできる行動のひとつ。
絶景を拝んで集合写真を残したら、ゲレンデを歩きながら周辺に残る「自然ではないもの」を探し集め、各々が自分のペースで山を下っていく。
各スタッフ同士、初めて顔を合わせた朝はどことなくあった距離感が、ゴミを拾いながら山を歩いているうちに、自然とシーズン中の話をしたり、途中で山菜を見つけて盛り上がったりと、いつの間にやら和気藹々とした雰囲気に。
肝心のゴミはというと……
想像以上にあまり落ちていない!!
スキー場利用者のマナーがいいからか、滑る人たちの意識が高いからか、キャッシュレスの世の中になったからか、喫煙者が減っているからか。
たくさんの理由が考えられるが、それにしても、当方がこれまで参加したマウンテンクリーン史上、明らかにもっともゴミが少ないと感じた。
スキー場利用者にもサステナブルな意識は確実に芽生えてきていると確信している。
とはいえ、最終的に全員の拾ったゴミを集めると、タバコのフィルターやペットボトル、施設内の劣化したプラスチック、スマホや電子タバコまで、それなりの量がゴミが回収された。
今回の活動に参加して感じたのは、ゴミを拾う行動そのものだけでなく、大好きな遊び場を大切に思う気持ちや意識を他の誰かと共有し、共に行動することの大切さ。
そしてシーズン中だけでなく一年を通して、雪やフィールドを守ること。
思いを行動にし、ひとりではなく誰かとともに手を取り合って動くことが、スキー場の未来を守るサステナビリティな意識への大きな力を生み出す。
東急スノーリゾートのスローガンである「いつまでも雪と遊べる世界へ」を実現するためには、みんなの力が必要となる。
それをこの日参加した東急スノーリゾート、BURTON、POW JAPANのメンバーたちは、改めて体感できたのではないだろうか。
今後は一般ユーザー参加型の検討も進めているとのこと。
もしスキー場以外でも、身近なところで今回のようなサステナビリティなクリーンイベントなどがあれば、ぜひ未来につながる行動に参加してほしい。
そして、みんなの力でこれからもウィンタースポーツが続けられる環境を守り続けていけたらこの上ない。
最後になるが、東急スノーリゾート、BURTON、POW JAPANからのメッセージをもらったので、ご紹介しよう。
東急スノーリゾート 山崎さん:
「東急スノーリゾートとしては、これまで冬から夏営業の切り替えのタイミングでスタッフによるゲレンデクリーンを行ってましたが、今回はさまざまな点で思いを共有するBURTONやPOW JAPANと共にやれたことがとても大きい。常々気候変動を感じていますが、スキー場の立場としてはフィールドを持っているだけでそれしかない。だから、メーカーやユーザーがいてはじめて成り立ち、どこか一つ欠けてもダメ。サステナビリティを実現するためには、もっと輪を大きく広げたいと思っています。年々ゴミは減っていて、お客様の意識も上がっていると感じています。
今後はスキー場間の繋がりも強め、一丸となってサステナビリティ for snowの活動を続けていきたいと思います。」
BURTON JAPAN 玉岡さん:
「スノーボードメーカーとしては、サステナビリティを考え、ヘルシーなビジネスを行うことが自分たちの責任だと感じています。フィールドがなければ何もできない、だからスキー場には常に感謝の気持ちを持っています。以前は全社員でマウンテンクリーンを行ったこともありましたが、今回はビジョンが合致する東急スノーリゾートと共に活動でき、スキー場運営側とともに取り組めたことに大きな意味を感じているんです。2008年が世界的な暖冬で、それがターニングポイントとなり現在のBurtonが在りますが、今後もBurtonのスタッフからユーザーへと広く発信できるよう、努めていきたいと思っています。」
POW JAPAN 脊戸柳さん:
「マウンテンクリーンは、それぞれが身近に感じるフィールドで参加しやすいアクションです。POWとしては、サステナブル・リゾート・アライアンスが発足し、パートナーである東急スノーリゾートとBURTONによる今回の取り組みは、「行動する仲間の力になる」というミッションが具現化した事例になりました。業界を超えたスノーコミュニティのいろんな人が関わってできたことが今回の大きなポイントだと思っています。今後もこのようなヨコのつながりを強化していきたいですね。また、マウンテンクリーンは自然を守ることに目を向ける入り口です。もっと各所でこの動きが広がり、地域の環境を考えるキッカケになったらいいなと願います。」
POWアンバサダー 丸山春菜さん:
「タングラムはよく滑りに来るホームマウンテンです。だから、自分たちの遊び場は自分たちでキレイにするという基本の気持ちをつねに持ち続けています。もちろん山が汚れていると、私がグリーンシーズンの活動で利用する湖にも影響します。今回のような活動に子どもと一緒に参加することで、ゴミを拾うことをとおして、捨てるのはNGだという感覚を伝えていけると思っています。よりよい環境を次の世代に残せるよう、できることをやっていきたいです。」

SLOPE PLANNING(POW JAPANパートナー企業) 丸山隼人さん:
「マウンテンクリーンはゴミを拾うイベントですが、スノーボードを続けていくと、”残さない” “持ち込まない”という意識が自然と身につくと思うんです。どの標高でも言えることですが、山-川-海へと繋がっていくので、出発点の山でまずはゴミを残さないことは重要。人の営みがある以上どうしてもゴミは出てしまいますが、拾うことにも限界がある。だからできるだけゴミになるものを持ち込まない、ペットボトルや缶は買わない。一人ひとりがその意識を持つだけでも、ちょっと変わってくると思います。」

取材・ライター:岸野 真希子

スノーボード歴 25年
90年代後半にザウスデビューし、一瞬でスノーボードの虜に。
在学中から雪山にコモりはじめ、雪を求めて夏はNZへ。
ショップ勤務後、スノーボード専門誌『TRANSWORLD SNOW boarding JAPAN』の編集者を経てフリーに転向。
2013年から白馬村に移住し、1年を通して自然を感じながらあそび、ライター業とともにショップの経営やイベント•大会運営をとおして、アクティブライフの実践と提案に全力を注いでいる。

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