プロが教えるヨガ6種
シーズン前は筋力だけでなく“動ける範囲”を整えるのが大切。 おすすめは足首・股関節・バランス・重心移動の4つを整える6種のヨガ。1回10〜15分、シーズン3〜4週間前から週2〜3回。今から間に合う。
プロスノーボーダー・ヨガインストラクターの太田有紀さん

講師:太田有紀(おおた・ゆき)

NERiNE Snowboard Academy主宰
結珠YOGA主宰

プロスノーボーダー・RYT500ヨガインストラクター・スポーツフードアドバイザー。自身が主宰するNERiNE Snowboard Academyでスノーボードレッスンを行うほか、head SnowboardsのFUTURE headsプログラムレッスンでヘッドコーチを務め、公式プロツアーなどではMCも担当。現在は神村学園山梨Jr.陸上ClubでActコーチとして、ジュニアアスリートのコンディショニングや身体づくり、食事サポートにも関わる。近年はハーフマラソンやトレイルランニングにも取り組み、自身の身体を通して、長くスポーツを楽しむためのコンディショニングを実践・発信している。

シーズン前に取り入れたい、ヨガベースの6つの動き

私自身、オフシーズンにヨガやランニングをしていても、いざ雪上に立つと「やっぱり使う場所が違う!」と毎年感じます。特に初滑りは、足首や股関節の動き、低い姿勢、左右への重心移動など、雪上ならではの感覚を身体が思い出すまで少し時間がかかることも。だから私は、シーズン前からヨガの動きを取り入れて、雪上で使う身体を少しずつ目覚めさせるようにしています。

スキー・スノーボードのシーズンが近づくと、板やブーツ、ウェアなどの準備を始める方も多いと思います。ここで忘れたくないのが、身体の準備。雪上では、脚力だけではなく、

足首や股関節が動くこと。
低い姿勢を保てること。
片脚になったときにも身体を支えられること。
前後左右へスムーズに重心移動できること。

こうした動きを組み合わせながら、私たちは滑っています。私はスノーボーダーとして滑る一方、ヨガインストラクターとして身体のコンディショニングにも関わっています。だからこそ、シーズン前は「鍛えること」だけでなく、雪上で気持ちよく動くための感覚を身体に戻していくことを意識しています。

今回は、スキー・スノーボードのシーズン前に取り入れたい、ヨガをベースにした6つの動きをご紹介します。
それぞれの動きが、雪上のどんな動きにつながるのかもあわせて紹介します。形をきれいに作ることよりも、目的を意識しながら身体を動かしてみてください。全部行っても10〜15分程度。ひとつずつ取り入れてもOK!慣れてきたら流れでつなげてみましょう♪

1|重心を動かしやすくする「足首モビリティ(可動性)」

足首モビリティのやり方。片膝立ちで前足のかかとをつけたまま、膝をつま先方向へ送るスキー・スノーボード前のヨガ

目的

膝をスムーズに曲げ、前後へ重心を動かしやすくする。
スキー・スノーボードでは、足首と膝を使いながら重心を調整します。普段の生活では足首を深く曲げる機会が少ないため、シーズン前にまず動きを確認しておきましょう。

やり方

片膝を床につき、反対側の足を前へ出します。前足のかかとは床につけたまま、膝をつま先方向へゆっくり前に送ります。
前へ出したら、ゆっくり戻します。
左右それぞれ10回程度。

ポイント

膝だけが内側に入らないよう、膝とつま先の向きをそろえます。どこまで前に出せるかを競う必要はありません。左右を比べながら、「右は動きやすい」「左は少し詰まる感じがある」など、今の身体の状態を確認してみてください。

2|低い姿勢を取りやすくする「アンジャネーヤーサナ」(三日月のポーズ)

アンジャネーヤーサナ(三日月のポーズ)のやり方。後ろ膝を床につき、両腕を上げて股関節の前側を伸ばす

目的

股関節の前側を動かし、低い滑走姿勢を取りやすくする。
滑走中は膝を曲げ、股関節を使った姿勢を取る場面が多くあります。股関節まわりが動きにくい状態で無理に低い姿勢を取ろうとすると、腰や膝など、ほかの部位で動きを補いやすくなります。シーズン前から股関節まわりを動かしやすい状態に整えておくことで、無理の少ない滑走姿勢づくりにつなげていきます。

やり方

右足を大きく前へ出し、左膝を床につけます。骨盤を正面に向けたまま、上半身を起こします。左の股関節前側が伸びる位置で、呼吸を3〜5回。余裕があれば両腕を頭の上へ伸ばします。反対側も同様に行います。

ポイント

腰を大きく反らす必要はありません。頭頂を上へ引き上げながら、股関節の前側がじんわり伸びている感覚を探してみましょう。

3|下半身と上半身をつなげる「ローランジ+ツイスト」(ねじったランジポーズ)

ローランジ+ツイストのやり方。ローランジの姿勢で片腕を上に伸ばし、下半身を安定させたまま上半身をひねる

目的

下半身を安定させたまま、上半身をスムーズに動かしやすくする。
スキー・スノーボードでは、脚だけで動くのではなく、下半身で雪面をとらえながら、上半身の向きや姿勢も細かくコントロールしています。そこで、ローランジにひねりを加え、股関節まわりを安定させた状態で胸まわりを動かす練習を取り入れます。

やり方

右足を前にしたローランジの姿勢から、左手を床、または右足の内側へ置きます。右手を天井方向へ伸ばしながら、胸を右へゆっくり開きます。そのまま3〜5呼吸。反対側も同様に行います。

ポイント

腰だけを無理にひねるのではなく、胸まわりからゆっくり回旋するイメージで行います。大きくひねることが目的ではありません。下半身は安定させたまま、上半身だけを無理なく動かす感覚を意識してみましょう。

4|滑走姿勢を支える「ウトゥカターサナ」(椅子のポーズ)

ウトゥカターサナ(椅子のポーズ)のやり方。お尻を後ろへ引いて膝を曲げ、両腕を上げて滑走姿勢に近い低い姿勢をキープ

目的

低い滑走姿勢を保つために、脚と体幹をバランスよく使えるようにする。
スキー・スノーボードでは、膝を曲げた状態で姿勢を保ちながら滑る場面が多くあります。太ももだけに頼るのではなく、お尻や体幹も使って身体全体で姿勢を支える感覚を身につけておくことで、滑走中の安定した姿勢づくりにつなげます。

やり方

両足を腰幅程度に開いて立ち、できそうであれば足をそろえます。そこから、お尻を後ろへ引くようにしながら膝を曲げ、椅子に座るような姿勢を作ります。背中を丸めすぎず、胸を軽く起こします。余裕があれば、両腕を前または斜め上へ伸ばします。20〜30秒キープし、2〜3セット行います。

ポイント

深くしゃがむことよりも、
・膝が内側に入りすぎていないか
・左右どちらかに体重が偏っていないか
・呼吸を止めていないか
を確認しましょう。

太ももだけで耐えるのではなく、お尻やお腹も使い、身体全体で滑走姿勢を支えるイメージで行いましょう。

5|バランスを立て直す力につなげる「ヴィーラバッドラーサナⅢ」(戦士のポーズ3)

ヴィーラバッドラーサナⅢ(戦士のポーズ3)のやり方。片脚で立ち、上半身と後ろ脚を一直線にしてバランスをとる

目的

片脚で身体を支えながら、姿勢を保つ力を養うため。
雪面はいつも同じ状態ではありません。硬いバーン、柔らかい雪、荒れた雪面など、滑走中は細かな変化に身体が対応し続けています。そこで取り入れたいのが、片脚で身体を支えながらバランスを取る動きです。
片脚で身体を支える感覚を身につけておくことで、雪面の変化に対応するための準備になります。

やり方

両足でまっすぐ立ちます。片脚に体重を乗せ、反対側の脚を後ろへ伸ばしながら、上半身を前へ倒します。頭から後ろ足までが一直線になるイメージで姿勢を保ちます。左右それぞれ20〜30秒程度行います。

ポイント

ぐらついても問題ありません。どこでバランスが崩れるのかを感じることも大切です。難しい場合は、壁や椅子に手を添えて行ってください。慣れてきたら、軸足の膝を軽く曲げて戻す動きを加えてもOK。

6|左右への重心移動をスムーズにする「スカンダーサナ」

スカンダーサナのやり方。脚を大きく開いて片側の膝を曲げ、左右へ重心移動する。6つの動きを流れでつなぐ手順つき

目的

ターンにつながる左右への重心移動をスムーズにする。
スクワットなどの上下方向の動きだけでなく、横方向への動きもシーズン前に取り入れておきたいところ。スキー・スノーボードでは、左右へ重心を移しながら板をコントロールします。
そのため、股関節を使って左右へ体重を移す感覚を身につけておくことが大切。

やり方

足を大きく開いて立ちます。右膝を曲げながら、右側へ重心を移します。
反対側の脚は伸ばします。
中央へ戻り、反対側も同様に行います。
左右交互に5〜10回程度行います。

ポイント

膝だけを横へ動かすのではなく、股関節から体重を移すイメージで行います。深くしゃがむことが目的ではなく左右に移動したときに、
「こちら側は入りやすい」
「反対側は動きにくい」
といった差があれば、それも今の身体の状態を知るヒントになります。

6つを流れでつなげてみる

慣れてきたら、今回の6つを続けて行ってみましょう。

足首モビリティ
↓
アンジャネーヤーサナ
↓
ローランジ+ツイスト
↓
ウトゥカターサナ
↓
ヴィーラバッドラーサナⅢ
↓
スカンダーサナ

全体で10〜15分程度が目安です。

すべてを完璧に行う必要はありません。時間がない日は、気になるものを2〜3種目だけ選んでもOK。できればシーズンインの数週間前から、週2〜3回程度。無理なく続けながら、足首・股関節・体幹・バランス・重心移動など、雪上で使う動きを少しずつ身体に思い出させていきましょう。

ヨガは「柔らかくする」だけではない

ヨガというと、ストレッチや柔軟性のイメージが強いかもしれません。
でも、スキー・スノーボードのためにヨガを取り入れる場合、身体を柔らかくすることだけが目的ではありません。

動かす。
支える。
バランスを取る。
左右へ重心を移す。

こうした動きを、自分の身体で確認していきます。

ヨガには、滑るための身体づくりにつながる要素がたくさんあります。難しいポーズを行う必要はなく、まずは自分の身体の状態を感じながら取り入れてみてください。

左右差や動かしにくい場所、バランスを崩しやすい方向など、普段は気づきにくい自分のクセを知るきっかけにもなります。

そうした身体のクセを知っておくことで、雪上でも「いつも同じ方向に体重が偏りやすい」「この方向のターンで身体が詰まりやすい」「疲れてくると姿勢が崩れやすい」といった、滑りのクセにも気づきやすくなります。

ヨガは、ただ身体を柔らかくするだけでなく、自分の身体を知り、より動きやすい状態へ整えていくための時間としても活用できます。

初滑りから気持ちよく動ける身体へ

シーズン直前になってから一気に追い込むのではなく、少し早めに身体を動かし始めておく。

足首や股関節を動かす。
低い姿勢を支える。
片脚でバランスを取る。
左右へ重心を移す。

こうした雪上につながる動きを少しずつ取り入れておくことで、スムーズなシーズンインにつながります。板やブーツ、ウェアの準備と一緒に、自分の身体も少し早めにシーズンイン。初滑りから気持ちよく動けるよう、今から準備を始めてみてください。
※痛みや強い違和感がある場合は無理に行わず、身体の状態に合わせて動きを調整してください。

FAQ

Q. スキー・スノーボードの準備はシーズンの何週間前から始めればいい?

A.
3〜4週間前からでも十分取り入れられます。余裕があれば、6〜8週間ほど前から週2〜3回を目安に少しずつ始めておくと、よりゆとりを持って身体を準備できます。今回紹介したメニューは1回10〜15分程度なので、始める時期にかかわらず、できるところから続けてみてください。

Q. 筋トレとヨガ、どちらがいい?

A.
ヨガは一見、身体を柔らかくするための動きに見えるかもしれませんが、ゆっくり身体を動かしたり、姿勢をキープしたりする中で、自分の体重を支えるために筋肉もしっかり使います。そのため、ヨガは柔軟性だけを高めるものではなく、筋力や身体を支える力を養うことにもつながります。一方で、より強い筋力やパワーをつけたい場合には、筋力トレーニングも必要です。「身体を動かしやすく整えたいのか」「筋力やパワーを高めたいのか」など、目的に合わせてヨガと筋トレを組み合わせるのがおすすめです。

Q. 滑走当日の朝にやってもいい?

A.
はい。ただし当日は、長くポーズをキープするよりも、足首モビリティや左右への重心移動など、身体を軽く動かしながら温める方法がおすすめです。

今回紹介したポーズを取り入れる場合も、キープ時間を短くして無理のない範囲で。滑る前は「柔らかくする」ことよりも、これから動く身体を目覚めさせるイメージで行ってみてください。

Q. 体が硬くてもできる?

A.
もちろんです!
ヨガは、写真と同じポーズを作ることが目的ではありません。同じ人でも朝と夜では身体の状態が違いますし、柔軟性や骨格、関節の動きやすさも人それぞれです。
壁や椅子に手を添えたり、膝の曲げ方を浅くしたりしながら、自分が心地よく動ける範囲で行ってください。
「ここは動きやすい」「こちら側は少し苦手」など、今の自分の身体を知ることもヨガの大切な部分です。

Q. スキーとスノーボードで違いはある?

A.
はい、違いがあります。
スキーは基本的に身体を進行方向へ向け、左右の脚をそれぞれ使いながら2本の板をコントロールします。一方、スノーボードは横向きのスタンスで両足が1枚の板につながっているため、重心移動の方向や股関節、上半身の使い方にも違いがあります。ただ、足首や股関節を動かすこと、低い姿勢を支えること、バランスを取ること、前後左右へ重心を移すことなど、土台となる身体の使い方には共通する部分も多くあります。今回紹介した6つの動きは、その「共通する土台」を整えることを目的に選んでいるので、スキーヤー、スノーボーダーどちらにも取り入れていただけます。

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