NEW ARTICLES

Jess Kimura×Miyonスペシャル対談 | 女子スノーボード ストリートのリアルと2人の絆【後半】

Jess Kimura×Miyonスペシャル対談
気がつけば立っていた、その場所で。
ー ストリートで生きてきた、2人の現在地 ー[後半]

福島県にある星野リゾート ネコマ マウンテンで開催された『The Uninvited Japan Open presented by YETI』。このイベントをきっかけに実現したJess KimuraとMiyonの対談。後編ではいいま2人がどんな思いで雪の上に立っているのかを聞いてみた。情熱を見失いかけた時期のこと、母になりスノーボードとの向き合い方が変わった話など、それでも2人は滑ることをやめなかった。

 『The Uninvited』がくれたフルパート


Jess:そういえば、最初にムービーでフルパートを撮ったときのことは覚えてる? あの時のMiyonがスゴく印象に残っているんだよね。
Miyon:もちろん覚えているよ!マウントフットで初めて会ったのがきっかけだったんだよね? でも、あの時は「映像を見て欲しい」って声をかけたけど、評価をして欲しいというより、ただ感想を聞けたらいいなという気持ちだったの。まさかJessのムービーにフルパートで出させてもらえるなんて、本当に想像もしていなかった。
Jess:そっか。でも私にとってもちょうど女のコだけのストリートムービーを作りたいなと考えていた時期だったから、良いタイミングだったの。
Miyon:それまで10年近くストリートを続けてきたけど、今までにないくらいモチベーションが上がったし、その熱量で挑んだ映像を全部使ってもらえたことにもとても感動したの。編集も素敵で音楽も良くて、繋ぎ方にもどこか “和” のテイストを感じて。日本をベースに活動しているひとりのライダーとして、ちゃんと見せてくれている感じが伝わりとにかくうれしかった。世界中の人から反応をもらえて、本当に多くの人に見てもらえた実感があった。「Riders Poll(「TRANSWORLD SNOWboarding」誌などが主催していた、当時世界のスノーボード界で最も名誉のあったアワード)」にも呼んでもらえたし。

名誉あるアワード「Riders Poll」では、世界のトップライダーたちとにこやかに記念撮影も。 Photo/Dar

Jess:あのパートは本当に良かったよ!
Miyon:うれしい! 今振り返ると、本当にいろんな思い出が一気に蘇ってくるんだよね。ただうれしいだけでなく、感謝の気持ちが何より大きい。私にとって『The Uninvited』のフルパートは間違いなく最高の経験だったと思う!

 Jessを突き動かすもの

Miyon:Jessは怪我も多かったからここまでの道のりは決して簡単ではなかったと思うんだけど、ずっとスノーボードを続けているじゃない? 何が一番のモチベーションになっているの?
Jess:うーん…自分が助けられる人たちのために、少しでも道をラクにしてあげたいっていう思いかな。人生って完全にラクになることはないけど、次の世代のコたちには昔の自分みたいな苦労をしなくて済むように歩んで欲しい。その思いがスノーボードを続けるモチベーションになっているんだと思う。もちろん最初に道を切り拓くのは本当にハード。でも、だからこそ思うの。みんなには希望を持って欲しい。
Miyon:本当にJessらしい素敵な考えだよね。Jessがいなかったら、今のガールズストリートシーンは全然違うと思う。

Jess:そんなことないよ(笑)。あと怪我をしてきたからこそ言えるけど、体は大切にして欲しい。特に頭はね!

ママとしてのMiyon


Jess:Miyonはママになってからスノーボードとの向き合い方は変わった?
Miyon:スゴく変わった。正直、ここまでスノーボードができなくなるとは思っていなかったんだよね。子供を授かる前は「産んでも普通に活動できるでしょ!」って簡単に思っていたの。でも実際は時間も体力も一気になくなった。滑りに行ける日も、練習できる日も本当に限られてしまい、一時期はめちゃくちゃ悩んだの。でも逆にその環境下だからこそ「私って本当にスノーボードが好きなんだな」って思えたんだ! どうやったら滑りに行けるか、練習時間を確保できるか、ずっと考えている自分がいたの。とはいえ、昔みたいに「めちゃくちゃ上手くなりたいからがむしゃらに滑る!」というのは今の私には難しい。もしかしたら違う表現方法があるんじゃないかなと模索していた頃、私が所属しているフィルムクルー『Dirty Pimp』のディレクターでカメラマンのDPが、ストリートからネイチャー系の方向に動き始めて、その映像を見たとき、自然と調和している風景にスゴく衝撃を受けたの。花や太陽の光や雪の輝きなど、自然の中で滑っている感じがただただ美しかった。ハードなスポットじゃなくても、自然の力を借りることで今までとは違う表現ができるんじゃないかなと思ったの。

4歳になる愛娘と一緒に。

Jess:その思い、分かる気がする。
Miyon:実は今日、初めてその撮影に行ってきたんだけど…。

Jess:そうだ、撮影行くって言っていたよね!どうだった!?
Miyon:正直難しくて、体力不足を感じた(笑) だから、体のケアをしながら今の自分と向き合い、その中でできる表現を探していきたいと思っているの。今はママをしながらどんなことができるかを、ちょっとワクワクしながら考えているんだ。出産してもこういう形でスノーボードが続けられるんだという姿を、次の世代にも見せられたらいいなと思っている。

ワクワクしながら、次の表現を探しているMiyon

アートとスノーボードが重なる場所


Jess:Miyonは自分の表現の仕方をスゴく大切にしているよね。アートもやっているし。ちなみにスノーボードとアートはどこか繋がっていると思う?

Miyon:スノーボードをしている自分とアートをしている自分はちょっと別のモードというか、別人格みたいな感覚だから繋がってるって意識したことは正直あまりないんだけど、よく考えてみるとどっちも自分にとっては自己表現のひとつ。そして両方やってきたからこそ思うのが、”基礎” ってめちゃくちゃ大事だなって。アートもスノーボードも、結局ベースがしっかりしていないとやりたい表現はできない。絵だったらデッサンのような基礎がきちんとできていれば、描きたいと思ったものを形にできるし、スノーボードもフリーランがしっかりしていれば、ジブもパークもストリートも、やりたい表現ができる。そういう意味ではアートとスノーボードってすごく似ているなと思う。
Jess:うん、そうだね!

「The Uninvited Japan Open」のロゴはMiyonのデザイン

Miyon:JessもCAPiTAから出ているシグネチャーボードのデザインをやっているよね?
Jess:「THE EQUALIZER」というモデルで、ソールには燃えるマッチのグラフィックが描かれているの。英語で 「Light a fire under their ass」という言葉があるんだけど、それは「人を奮い立たせて行動させる」という意味。女のコたちの魂に「火をつけたい」、女のコたちを支援するために皆んなが行動して欲しいという、私からガールズへのメッセージが込められているんだ。

自身のグラフィックに込められた女のコたちへの熱い思いを語るJess。

Miyon:スゴく素敵だね!
Jess:鳥と鳥カゴのグラフィックを描いたトップシートにもストーリーがあるの。「鳥が鍵を取って檻から飛び立ち、最後は檻そのものを燃やす」。これは「自分を縛っていたものを壊す」という意味で、飛び立つまでの過程でできた火傷や傷などの痛みも全て抱えながら自分を解放していく、そして他の鳥たちが二度と閉じ込められないよう檻を壊すという思いを込めて、描いたんだ。

CAPiTAから出ているJessのシグネチャーモデル「THE EQUALIZER」

Miyon:これからの若いガールズボーダーたちにも良いメッセージになるよね。

10年後、20年後も

Jess:Miyonは10年後、20年後はどんなスノーボードをしていると思う?
Miyon:多分、撮影はしていると思う。ストリートというよりは、もっとネイチャー系に移行している気がするなあ。自然の中で滑っていたい! でも、パークも大好きだからきっと滑っていると思う。特にフロントノーズには絶対こだわり続けたい! 「ダレ?あのおばあちゃん!? 70歳らしいよ?」なんて言われながら(笑)
Jess:それ最高だね!
Miyon:そんな未来だったら良いなって思う。Jessは?
Jess:実を言うと、私はここ10年くらいスノーボードに強くのめり込み過ぎちゃって、「愛」とか「情熱」のようなモノを少し見失っていたの。もちろん、モチベーションがなかったわけではないんだけどどこか機械的に動いていたから、滑り続けていたもののちょっと空っぽだった。

でも最近、ようやく元の自分を取り戻しつつあるか気がしていて……。だから10年後、20年後は純粋に楽しむためにスノーボードを続けていられたらいいな。それと、冬はもっと日本で過ごしたい! 本当に落ち着くし、ホームにいる感じがするんだよね。サーフィンもしたいし、パウダーの中でスノーサーフィンもしたい。あとはMiyonと同じく「おばあちゃんのハンドプラントとメソッドの世界記録に挑戦」したいな(笑)

Jessのドキュメンタリームービーはコチラ!


Jessといえばハンドプラント。 Photo/YOSH

Miyon:
イイね! じゃ私も隣でフロントノーズやってる(笑)
Jess:最高だね!

【開会式で語られた、Jess Kimuraからガールズライダーへのメッセージ】


最後に、2人が口を揃えて語っていたのは日本のガールズライダーのレベルの高さ。まだ世界に知られていないけれど、日本には本当にスゴいライダーがたくさんいる。特に今の10代には大きな可能性を感じているそう。ただ、ストリートというフィールドは危険も多い世界。だからこそ無理をしすぎず、心も身体も大切にしながら長く続けてほしい。そんな想いを語ってくれた。

笑いながら話す場面もあれば、これまでの時間を振り返り、思わず涙がこぼれる瞬間もあった。その姿からは2人が歩んできた時間の重みと互いへの深いリスペクトが静かに伝わってくる。10年後も20年後も。きっと2人はそれぞれのスタイルで雪の上に立ち続けているだろう。


PROFILE

Jess Kimura
カナダ出身。プロスノーボーダー。ストリートシーンを牽引してきたライダーの一人であり、女性だけのストリートイベント『The Uninvited』のオーガナイザー。映像制作やイベントを通して、ガールズライダーの可能性を世界に広げ続けている。
Sponsor:CAPiTA / UNION / Coal / The North Face / Yeti / Monster / Smith

Miyon
山口美英。福岡県出身。日本のストリートシーンを牽引。「The Uninvited」では日本出身のガールズボーダーとして初めてビデオの個人パートを担うなど国内外で活動。現在はライダーとして活動しながら一児の母としてもスノーボードと向き合い続けている。『The Uninvited Japan Open』ではイベントロゴデザインも担当した。
Sponsor:CAPiTA / UNION / DEELUXE / DIMITO / COAL / ムラサキスポーツ / JUSTICE village

Photo / Remi Fukamachi 
Interview&Text / Yoco Sato
Interpreter / JT(Customproduce Inc.)

Special Thanks / Customproduce.INC、Hoshino Resorts NEKOMA Mountain、The Uninvited