日本全国のスノーリゾートの中でも、目覚ましい進化を遂げている注目株の一つが、白馬エリア(長野県白馬村・小谷村)だ。
白馬と言えば、1998年の長野冬季オリンピックをきっかけに、極上のパウダースノーが楽しめるエリアとして、世界中で知名度を上げた。外国人観光客を多く取り込みつつも、さらなる魅力的なリゾートへと進化するために、矢継ぎ早の施策を打ち出しており、新しい楽しみ方や、滞在の選択肢も広がってきている。
「白馬八方尾根スキー場」「栂池高原スキー場」「白馬岩岳スノーフィールド」の3つのスキー場を運営する、白馬観光開発株式会社主催のプレスツアーの様子を、徹底紹介する。
滑らずとも行きたくなる絶景!北アルプスの展望台「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」
白馬エリアの変革の象徴的な存在となっているのが、白馬岩岳スノーフィールド山頂に2018年10月6日(土)にオープンしたばかりの絶景テラス「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」だ。
白馬エリアのスキー場は、北アルプスの山々の斜面に設けられているケースが多いが、岩茸山(白馬岩岳スノーフィールド)は、北アルプスの正面に独立する山。山頂は、白馬三山を中心とする、北アルプスの山々の、天然の展望台になっている。
HAKUBA MOUNTAIN HARBORからの雄大な景色は、掛け値なしに素晴らしい。視界の左端には、白馬八方尾根スキー場が見え、唐松岳、不帰ノ瞼(かえらずのけん)、白馬三山と続き、栂池高原スキー場のあたりまで、ひといきに見渡せる。
しかも、ただ景色が良いというだけでなく、「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」には、ニューヨーク発祥の人気ベーカリーカフェ「THE CITY BAKERY」が出店している。
国内で最も険しい山脈の一つである、北アルプスの絶景を間近に眺めながら、プレッツェルクロワッサン(白馬限定「白馬豚のクロワッサンサンド」が販売されている)と、美味しい珈琲を味わえるとあって、冬季だけではなく、グリーンシーズンも多くの観光客が訪れるほどだ。
スキー場で優雅に、贅沢に。全国初プレミアムサービス「HAKUBA S-CLASS 〜VIP lounge & Priority pass〜」
スノーレジャーでは、ストレスを感じるケースもある。混雑時のリフトの待ち時間、飲食・休憩スペースの混雑などが、その最たるものだろう。
白馬岩岳スノーフィールドでは、2019-2020シーズンより、国内初というプレミアムサービス「HAKUBA S-CLASS 〜VIP lounge & Priority pass〜」を開始し、スノーリゾートでの滞在の仕方に、一石を投じる。
中核となるのが、スキー場内のVIPラウンジを利用できるサービス。特に、ゲレンデ中腹のメインラウンジは、限られた人数で利用するには贅沢すぎると思えるほどの、ゆったりした空間が印象的だ。
開放感のある大きな窓からは、素晴らしい北アルプスの山並みが見える。この絶景を、こたつに入って足を伸ばし、暖まりながら眺められる贅沢さ。子供向けの遊び場スペースも併設されており、ファミリーでもくつろげる。
こたつスペース以外にも、ソファや吊り下げ式のチェア、テントなど、お洒落で遊び心あるファニチャーが配置され、思い思いに過ごすことができる。
軽食やデザート、ドリンク、白馬ビールやワイン、日本酒を含むアルコール類なども用意されている。もちろん、追加料金なしで、食べ放題、飲み放題。
また、山頂レストラン「スカイアーク」内にも、VIPラウンジ(ピークラウンジ)がある。こちらはこぢんまりとしたスペースだが、プライベート感があり、まるで低反発枕のように柔らかく、座り心地のよいマットのうえで、足を伸ばしてくつろげる。飲食サービスでは、創業慶応元年(1865年)という長野県大町市の酒蔵、市野屋の希少な日本酒を楽しむことができるのが特長だ。
「HAKUBA S Class 〜VIP lounge & Priority pass〜」は、VIPラウンジの他、ゴンドラの優先搭乗、宿泊施設からの送迎、ゴンドラリフトのすぐ近くの専用駐車場、クロークサービス、温泉入浴などがセットになっている。
オプションにはなるが、ハイエンドのスキー・スノーボード用具をレンタルできるサービスや、専任ガイドがついてアテンドしてくれるサービス、営業終了後の夜のゲレンデを雪上車に乗って楽しめるサービスなども用意され、まるで高級リゾートホテルのようだ。
「HAKUBA S Class 〜VIP lounge & Priority pass〜」は、大人15,000円、15歳以下の子供7,500円と、なかなかのお値段。
※6歳以下無料。金額は税抜。リフト券代金別途
だが、人気のテーマパークやレジャー施設でも、追加料金を支払って、長時間並ぶことなくアトラクションやショーを楽しめたり、人気ホテルやレストランを優先予約できたりするサービスがあり、かなりの需要があるケースも少なくない。
昔ながらの感覚では、スキー場では滑ってなんぼ、という印象が強いが、国内随一の絶景を眺められる白馬岩岳スノーフィールドなので、雪山でラグジュアリーに過ごすバケーションも素敵だ。スキーはしたいけれど、ストレスなく過ごしたい日本人はもちろん、外国人観光客の富裕層にも注目されそうだ。
スキー旅行で、古民家リゾートに泊まる!
スキー旅行と言うと、ホテルや旅館に泊まるのが定番だが、白馬ではこのスタイルも変わりつつある。白馬岩岳スノーフィールドの麓には、新田(しんでん)という、古き良き町並みを残す旅館街がある。歴史ある建物が並び、街路に沿った水路からはせせらぎが聞こえるなど、日本の田舎らしい風情がある。
スノーレジャー人口が減り、また後継者問題などもあり、数十年前ほどの活気が失われつつあるなか、古民家や、営業を終える旅館をリノベーションして、再生しようという動きがある。先駆となっているのが、”白馬岩岳古民家リゾート” と銘打った「旅籠丸八」だ。昨シーズンに壱番館と弐番館、そして2019-2020シーズンに参番館がオープンする。
まだお客さんを迎える前の参番館の中を見せてもらった。元は蔵だったという室内は、二階建てになっており、一階は、木材の風合いが活かされたリビングルームとキッチン、スタイリッシュなバスルーム。
二階はベッドルーム。吹き抜けになっており、隠れ家のような雰囲気が印象的だ。梁(はり)や壁の木材がむき出しで、間接照明がアクセントになり、日本家屋らしさがあふれる。
食事は、160年以上の歴史があるという古⺠家をリノベーションした「庄屋丸八ダイニング」で。長野産の野菜やお肉はもちろんのこと、白馬は小一時間ほど車を走らせると、日本海の糸魚川市に出る立地で、この「塩の道」を通って届く新鮮な魚介類を中心に、創作和食を提供する。
北欧思想の宿で身体を丁寧にいたわる。新しい冬旅の提案「haluta hakuba」
「旅籠丸八」と同じ新田地区には、民宿を再生した「haluta hakuba」も登場する。通常、クオリティの高いホテルや旅館では、豪華な食事をするなど贅沢に過ごすことが目的になるが、「haluta hakuba」のコンセプトは「本来の自分に還る場所」。北欧の思想をベースに、健康と環境に配慮された空間で過ごす、セルフリトリート型宿泊施設だ。
自己免疫力を高められる石風呂ミスト浴の「Toji-ba haluta」、滞在者が静かに心地よく過ごすための共用スペース「Pacific」、環境や体に与える影響を考え「本当にいい」と言えるオーガニック食品やアメニティグッズを取り扱う「ビオキオスク」などがある。
また、halutaが取り扱う北欧ヴィンテージ家具がそこかしこに配置されるほか、内装および備品には、木や金属など、経年変化により味わいが増す素材が多用されている。
館内が、エアコンやストーブを使わずとも暖かいのも、印象深い。予防医療の観点から、健康に過ごせる空気環境を設計しているといい、断熱性能が高いデンマーク製のロックウールで建物全体を覆っている。
スノーレジャーで白馬の雪山の雄大な自然を感じつつ、宿でも自分の身体を丁寧にいたわる。そんな冬旅も素敵だ。
イケイケ時代の面影を残す「栂池」に、旅人同士で交流できるホステル「UNPLAN Village HAKUBA」
40代後半〜50代以上の方は、栂池高原スキー場の周辺が、ディスコが何軒もあった若者の町だった過去を、覚えていらっしゃるかもしれない。バブル時代が終わり、現在はすっかり様変わりし、国内随一の広大な緩斜面や「白馬つがいけSNOW WOW!」を目当てにしたファミリー、そして外国人の姿も増えている。
そんな栂池高原スキー場に、東京・神楽坂と新宿で抜群の評価を受けるホステル「UNPLAN(アンプラン)」が登場する。
岩岳の新田地区と同じように、栂池エリアでも、古くなった民宿等をリノベーションして、再生する。そのため、フロント機能やカフェも併設する「UNPLAN Village HAKUBA 1」は中央駐車場の真横、宿泊専用の「UNPLAN Village HAKUBA 2」はゲレンデサイドと、どちらも一等地だ。
「UNPLAN」は、その名のとおり、「予期せぬ出会いによって旅を盛り上げる、新たな発見への期待に満ちたホステル」というコンセプト。カーテンで仕切るだけの1人分のスペース(ドミトリー)や、2〜3人用の小部屋など、最低限のプライベートスペースと、宿泊者同士で交流できるオープンな共有スペースとで構成されている。
栂池エリアには、昔ながらの1泊2食付きの民宿が多いが、ホステルでは、食事は「UNPLAN Village HAKUBA 1」の2階のカフェや、周辺の飲食店を利用。
また、地下には元ディスコだったスペースを改装して、バーがオープンする予定といい、こちらでも旅人同士での交流を楽しめそうだ。
ただ栂池高原スキー場に滑りに行くとだけ決めて、フラッと出かけ、旅先での出会いを楽しんだり、リーズナブルに気ままな旅をしたり。そんな新しいスノーレジャーの形も、楽しんでみてはどうだろうか。
Text & Photo:寄金 佳一